映画『怪物』ネタバレあり感想/結末の解釈。伏線の解説。怪物は誰か?【初鑑賞後】

https://gaga.ne.jp/kaibutsu-movie/

映画『怪物』ネタバレあり感想/結末の解釈。伏線の解説。怪物は誰か?初鑑賞後に思ったあれこれ。

映画『怪物』を見てきました。公開日は大雨だったため断念し、翌日の3日、土曜に干渉しました。

当記事はネタバレありです。ご注意ください。

 

映画『怪物』とは?

youtu.be

映画『怪物』 は監督・是枝裕和万引き家族) × 脚本・坂元裕二(花束みたいな恋をした)日本屈指の映像作家&ストーリーテラー、夢のコラボレーション実現!

2023年6月2日(金)から公開。

【あらすじ】大きな湖のある郊外の町。息子を愛するシングルマザー、生徒思いの学校教師、そして無邪気な子供たち。それは、よくある子供同士のケンカに見えた。しかし、彼らの食い違う主張は次第に社会やメディアを巻き込み、大ごとになっていく。そしてある嵐の朝、子供たちは忽然と姿を消した――

結末の解釈

 

ある嵐の朝、子供たちは忽然と姿を消した――

 

湊の母と先生が必死になって子供たちを探しにいきます。そしてたどり着いたのは廃バスで・・・。という、気になるところで、子供たちの視点へ。

 

湊は台風の中、星川くんの家へ行きます。そしてお風呂場で、気を失いかけている星川くんを発見。2人は自転車を走らせ廃バスへ。2人はバスの中から土砂崩れであろう轟音を聞きます。「出発するのかな?」と運転席側へ移動する2人。

 

その後、2人は、トンネル?暗闇?抜け道?(この場面、うろ覚えです)を抜けていき、反対側に出たのか、嵐が去った明るい陽射しの森へ。

 

ここで「生まれ変わったのかな?」「そういうのはないよ」との2人の会話があります。

 

そして2人は泥だらけのまま晴れた森を「わー」「わー」と大声で叫びながら無邪気に駈けて行きます。ここで物語は終わり、エンドロールへ。

 

え?????

 

ここで終わるの???母たちが廃バスで見たものは映さないんだ・・・。

 

私は、茫然自失のまま、エンドロールを眺めることに・・・

 

なぜか切ない余韻が・・・

 

どうして切なく感じてしまったのか。直感的にです。

 

ああ、子供たち亡くなってしまったんだと思ったから。

 

湊の母・早織と保利先生が廃バスの泥だらけの窓を開けて中を見る場面が、土砂崩れに飲み込まれてバスが横転してしまった感じなんですよね。

 

→ということは、湊と星川くんは土砂に埋もれて亡くなっている?!

→ということは、湊と星川くんが快晴の森ではしゃぐ場面は、天国であり、あの世…なのかも。

 

でも、でもですよ。2人は夢を見ているだけ、気を失っているだけの可能性も残しています。子供が亡くなるのは描きたくないので、その結末はぼかしているんだと思います。

 

ノベライズ版やシナリオ本、2回目見たときの印象はまた違うかもしれませんが・・・

 

初見の感想では、感触では・・・2人は亡くなったのかなあと思いました。でも、ちょっと待てよ。と鑑賞後、しばらくして、湊の母・早織と保利先生が廃バスで何を見たかは示されてないじゃないかと思い直します。

 

私は、2人は夢を見ているだけ・・・という結末の解釈をしたいなと思います。その方が希望があるなあと思うから。あれが天国のシーンならば、つらすぎるから。

伏線の解説

多くの伏線がある本作。気づいた点をみていきます。

■湊のスニーカーが片方なくなったのは、黒川くんに片方を貸したから。

■風呂場で髪を切ったのは・・・星川くんに髪を触られたことで感じた思いを振り切りたかったのかな?女の子みたいだから切りたくなったのかな?

■水筒に泥が入っていた謎・・・猫の火葬で火事になるのを避けるため、消火のために、泥水をくんだから。

■校長と孫の写真の向きの違和感(校長の机からは見えない向き)・・・早織にプレッシャーをかけるために、あえて。

■湊と星川くんの喧嘩・・・星川くんとの関係がバレそうになったから。

■湊の教室での暴走・・・星川くんがからかわれてたから、気をそらすため。
■保利先生が飴をなめた理由・・・なめた態度をとって、自分は悪くないということを伝える、せめてもの抵抗?

怪物とは誰か?

タイトルの意味する怪物の正体とは誰か?

実は、映画では、明確な答えがないのです。

私の解釈では・・・人間すべて怪物な面があるです。

ストーリー的には、同性が好きなメインの少年2人が自分のことを「怪物」と思っているのだと思いますが・・・

母親は(教師から見たら)モンスターペアレント。つまり怪物。
■母親からみた教師たちは話が通じない怪物。世間体が一番大事な怪物。
■いじめをする小学生=モンスター。
■親からみて不可解な行動をする小学生も怪物。
■息子を「豚の脳」が入ってると言って、虐待する父も怪物。
■息子に「普通の」幸せを願う母も怪物。(これは言いすぎか?)
■真実をつかまず断罪するメディア、マスコミも怪物。
■夫に罪をなすりつけ、人の心を失くした抜け殻のような校長も怪物。

 

私は、ある女の子も気になりました。星川くんだちが猫をいじめてたと先生に告げ口して、その後、立場が悪くなった先生に教えてくれたことを「証言してほしい」と言われると「知らない」と答えた女の子。

これってオトナになってもあるあるです。日和見主義(ひよりみしゅぎ)。自分に都合のよいほうへつこうと、形勢をうかがって態度を変えています。

人間は「考える」ことで人間になるのだから、自分の判断や方針をもたず,大勢に引きずられて無原則的に行動するのは・・・機械といっしょ。動物といっしょ。モンスターともいえるのではないか?といったら厳しすぎるでしょうか。

初鑑賞後の印象的な台詞2選

印象的な言葉が2つあります。

ひとつは・・・母親の早織が「湊がふつうに結婚して子供を持つまでは頑張るってお父さんに約束してる」と運転しながら助手席の湊へ言うシーン。

しかし「僕はお父さんにはならない」と言った湊の声は騒音にかき消されていました。

 

お父さんはどういう人だった?・・・真実かは不明ですが、事故死した湊の父は不倫旅行中だったらしいです。家族を裏切ったということ。

 

また、早織の望む「幸せな家庭」には、なれない。同性が好きだから。という意味もあうことでしょう。

 

二つ目は、校長先生が音楽室で言ったセリフです。

「誰かにしか手に入らないものは幸せとは言わない。誰でも手に入るものを幸せという」

 

直前。湊が好きな子がいるのに「嘘をついた」旨を述べており、それに対して校長先生は「しょうもない。しょうもない。しょうもない。そんなもの。」とつぶやきます。その上での「誰かにしか…」という言葉です。

 

誰かにしか手に入らないものとは・・・(湊にとっての)異性同士の結婚。幸せ。そんな世の中に迎合して、自分を偽って合わせるのなんてしょうもない。ってことかな。

誰でも手に入るものが幸せ。・・・幸せって、世界を敵に回さなくてはいけないものではないのだと思います。特別なものではないのだと思います。

・・・なんだか坂元節が炸裂な言葉で、終わってからも考えてしまいます。これは私の感想なので、あしからず(笑)